120113_前田りり子フルートの夕べ in 珈琲美美2012/01/14


2012年01月13日(金)  19:30~ 会場:珈琲美美

珈琲美美 無伴奏コンサート2012
前田りり子 フルートの夕べ
[ 後援:冬眠舎  協賛:けやき通り音楽祭 ]


料金  \2300(珈琲・菓子付)


J.ファン・エイク(1590-1657):「笛の楽園」より 涙のパヴァーヌ
{ ルネッサンス・フルート D管テナー (16世紀) }

J.ファン・エイク(1590-1657):「笛の楽園」より イギリスのナイチンゲール
{ ルネッサンス・フルート A管ディスカント (16世紀) }

F.クープラン(1668-1733):恋の鶯

J.S.バッハ(1685-1750):無伴奏フルートのための組曲 イ短調

G.P.テレマン(1681-1767):ファンタジー 第8番 ホ短調
{ オーバーレンダーモデル バロックフルート (ドイツ 18世紀 前~中期) }

------------------- 休憩 -----------------

ブロックヴィッツ(1687-1742)、
M.ブラヴェ(1700-1768)&J/クヴァンツ(1697-1773):組曲 ホ短調
{ G.A.ロッテンブルグモデル ロココ・フルート (ベルギー 18世紀中期) }

C.P.E.バッハ(1714-1788):無伴奏フルートのためのソナタ イ短調
{ H.グレンザー クラシック・フルート (ドイツ 1800年頃) }

F.クーラウ(1786-1832):ディヴェルティメント 第2番より ラルゲット
{ C.サックス 6鍵式ロマンチック・フルート (ベルギー 1820~30頃) }

J.ドンジョン(1839-1912):サロンエチュードよりエレジー
{ L.ロット(2代目ヴィレット) ベーム式フルート (フランス 1878) }

アンコール1曲


演奏終了後、美美ご主人のごあいさつ、
「今夜ほどわかりやすいコンサートは、初めてでしたッ!!!」

古楽音楽祭のセミナーでは、前田りり子氏が
外来演奏家の通訳をなさる機会があります。
それをお聞きになったことのある方なら、
すぐにお解かりになっていただけると思いますが、
この方の通訳、「目から鼻に抜ける」というのはこういう事なのか!?と、
がってんボタンを叩き続けたくなってしまうほどなんです。
とびっきり、頭の回転の速い方なのですね。

今夜のコンサートは、
フルートの変遷をたどりながら、音楽の歴史を振り返るという内容。
楽曲ごとに楽器を取り替えながら、

なぜこういう楽器が必要だったのか、
どうしてこうなったのか、
どうすればこう出来るのか、
その周りで、一体、何が起こっていたのか、
音楽は、それにどう対応していったのか、

これら多角的な視点をひとつにまとめて、
わかり易くズズッと解説を進めるという、いかにも「面倒」な企画なんですが、
この方の手にかかると、いとも簡単に実現してしまう。
まるで手品のようです。

前に同様の企画コンサートを聞いたことがありますが、
今夜のようなわかり易さでは、全くなかったナ・・・

会場のコンパクトさも影響しているのかもしれません。
今夜の会場は、25名で超満員という空間。
私の膝の上のパンフには、常に演奏者の影が映っている、
というような至近距離での鑑賞、という事になります。

演奏者の発する「音」は、細大漏らさず聴こえてきます。
フルート奏者の息継ぎが、こんなに激しいものだというのは
今まで想像したことさえなかった。
「呼吸困難で今にも倒れそうな人」が命がけで空気を吸い込む、
みたいな音なんですね。

しかし、考えてみれば、今夜の前半演奏された曲目というのは、
本来、せいぜいこれ位の人数で聴かれることしか想定してないでしょうし、
これを大ホールで演奏することの方が、変、なんじゃないのかな?
こういう細やかな表情が聴き取れて、
初めてその曲の「キモ」が掴めた、と思えた経験というのは、
どなたにもあるんじゃないでしょうか。

たっぷりとしたテンポで演奏されたクープランの「鶯」、
窓の外の街路樹はまだ冬の真最中、裸坊主ですが
まるで、あの枝で息の長い唄を歌う鳥の姿が見えてくるよう。

CPEバッハの無伴奏フルートソナタを初めて聴いたのは、
有田正広氏のArchive盤でした。
その愛弟子である前田りり子氏の今夜の演奏では、
ずっと軽やかで、優美な表情になっています。

年月の変遷をあらためて実感、でアリマシタ。